12歳女性がTV番組撮影中にヘリオックスを吸引して意識障害になったニュースがあった。
ヘリウムによる空気塞栓症の機序を考えてみた。
ヘリウムの溶解度は0.0870ml/mlH2Oで、窒素0.01470ml/mlH2Oの半分しかない。
もしヘリウムで塞栓になるなら、窒素で塞栓になる可能性の方が高くなるはず
だとしたら、日常的に空気塞栓の人がいるはず。
実際には空気塞栓なんてダイビングとか潜水士でしか発症しないレアな疾患である。
ポイントはスプレーから直接吸引した(だろう)こと。
1.スプレーから直接ヘリオックスを吸った
2.高気圧の気体が肺に流れ、肺の一部にBarotrauma(気圧性外傷)を引き起こした
3.肺の損傷部位から直接血管内に空気が流入した
4.立った状態であれば空気は脳血管に流れ、脳梗塞を引き起こした
以上が機序だと考えられる。
イメージ的には大きく息を吸って肺が最大に膨らんだ状態なのに、スプレーから高気圧の空気が流れてきて、肺の一部が壊れたということ。
溶解度の問題ではないので、スプレーから大量の空気を吸わない限り窒素での塞栓は起き得ない。
大人でも同様なことが起こりえるが、肺活量が大きな大人であればBarotraumaになりにくいだろう。
ちなみにダイビングや潜水士の塞栓症の機序は以下の通り。
1.水中の高気圧環境で血液中に窒素が溶解していく
2.1気圧環境に戻った時に、溶解しきれなくなった窒素が血管内で気体に戻る
3.塞栓症状を引き起こす
高気圧環境の塞栓症は大血管で塞栓が起こるとは限らず、多様な症状が起こる。